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ばれた俺

トンテンカンコン船の上では小気味のいいカナヅチの音が響き渡っていた。

俺も一心不乱に釘を打ちつけ、俺達の船を新しい姿に変える。

と言うのもきっかけは俺が提案した、船の最後の改造案である。



「羽根? 羽根をつけるのか? 船に?」

怪訝そうなファニーに俺は力強く頷いた。

「そう、飛べそうな奴」

「なんでまた? 空でも飛ぶ気か?」

「……まぁそうだけど」

「「「はぁ!?」」」

そんなやり取りの後、緊急会議が開かれたのだ。

つまり……空島目指そうとしてたのがばれちゃったんだぜ!

えへ……じゃすまないよね?

案の定全員の視線を一身に集めて、気分は裁判である。

「……何を考えているかと思ったら、そんな夢物語を」

ファニーのじとっとした視線が痛い。

「空に島があるんですか?」

レナはいまいち想像できないのだろう、彼女の頭の周りには疑問符が飛び交っていた。

「……いや、空には島じゃなくて海が浮いてるんだよ」

一応補足しておくと、今度はカールが困り顔である。

「おいおい、冗談きついぜ。海がどうやって浮くんだよ」

「お空の海は泳げるのかな?」

しかしながらロカはそんなことを言いながら楽しそうに首をかしげた。

「……ロカ、少しは疑え」

カールはやれやれと肩をすくめるが。ロカは逆に不思議そうな顔になる。

俺もなぜだろうと疑問に思ったのだが、続く台詞に泣きそうになった。

「でも……コーンがメチャクチャ言うのはいつもの事だし?」

「……確かに」

「一理ある」

「おい、お前ら……」

ちょっと普段から俺のことをどう思っているのか問いただしたい衝動に駆られたが、今は我慢である。

「でも、嘘を言ったことは一回もないよ?」

そして不意打ちでロカはきょとんとしながら当たり前みたいに言うので、俺はしかし今度はちょっとばかり感動した。

ロカに続いて、立ち上がったのはレナである。

鼻息も荒く、拳を握り締めたレナは俺をじっと見つめると、力強く頷いて宣言した。

「……当然です! 私はコーンさんが行くというならどこへでもついていきます!」

「まぁ落ち着け、レナちゃん。コーン? お前は本気で空に島があると考えてるんだな?」

続けてカールのそんな質問に、俺は頷いて肯定した。

「ああ」

「それは俺達全員のメリットになるとも思ってるんだよな?」

「……リスクは高いが、思ってる」

「そのリスクと命を天秤にかけても?」

「……すまん」

それは確かに、常識外れに馬鹿なことだとはわかっているんだ。

だけど、どうしても俺はみんなを空に連れて行きたい。

もし空で振り落とされたとしても保険が利くように、舞空術の訓練には特に力を入れている。

それでもとてもじゃないが安全を保障出来るわけではないけれど……。

ダメだ、一個も説得できる気がしない。

背中にだらだらと汗を掻き、言葉を出せずにいる俺に、しかしカールもやれやれと嘆息していた。

「はぁ……お前ってバカだよなぁ」

そんなしみじみ言わなくえても。

「うう……やっぱりついてきてくれないか?」

事が事だけに愛想をつかされても仕方がないとは思う。

確かに俺の言っている事が突飛過ぎるのだ。

俺は空に島があることを確信しているからこそ、こんなことが言える。

だけど、何も知らなければ?

それはただの自殺志願者の戯言に聞こえるだろう。

「はぁ? いくに決まってるだろうが!」

だが、カールの返事は俺の予想していたものとは180度違っていたのだ。

「へ?」

驚いて顔を上げた俺に、カールは頭をかきながらぶっきらぼうに言った。

「ロカの言うとおり無茶は今に始まった事じゃねぇんだよ。空の上に島はあるんだろ? それにお宝も。お前に自信があるってなら、逃す手はねぇよ」

「私は、一つ聞いておきたいことがあるな」

「……なんだ?」

ファニーもまたこちらをまっすぐ見て、質問を投げかける。

「そこに闘争はあるか?」

「……極上のが」

俺は嘘偽りなく首肯すると、ファニーは満足げに笑っていた。

「ならば私に言う事はない」

「レナとロカも随分危険な事になると思うんだけど……」

「愚問です。ついていかない理由がないです」

「大丈夫だよ! 僕の仕事はコーン達が行きたいところに連れて行くことだからね!」

尋ねた俺に間髪いれずに力強く返してくれる女の子二人に、思わず言葉が詰まる。

「……おまえら」

こいつらが仲間でよかった。

こっそり涙ぐんだ俺だった。



そして空にいく方法などを洗いざらい話して、ようやく理解を得ることが出来たところで、羽根を取り付けていると言うわけだ。

そもそも大改修の時に通常の船よりもはるかに頑強に作りかえられたうちの船だ。

伊達に一億近くかけてはいない。

改造自体もそう時間もかかるまい。

もっとも、ファニーにそのことを話したら、殴られたが。

「しかし、ノックアップストリームか。空に行けるかどうかは賭けみたいなものだな」

「ノックアップストリーム知ってるのか?」

「ああ、もっとも知識としてだけだがな。相当な規模の災害だと聞いている。海が空まで立ち上るそうじゃないか」

すると話を聞いていたロカが笑顔で手を挙げた。

「僕は知ってるよ! 『突き上げる海流』でしょ? 一説じゃ海底の空洞に海水が流れ込んで、地熱で温められた海水が蒸気になることで大きな圧力を生んで、大爆発を起こすって言われてるんだよね? グランドラインじゃそれで粉々になる船もあるって聞いてるけど、どんなだろうね?」

「……」

「……」

「どったの?」

「いや、ロカがすごく賢そうに見えたんで」

「意外だった」

「なんだよそれ! ちゃんと勉強したって言ったでしょ!」

ぷんすか怒り出したロカに、俺とファニーは慌てて謝った。

「とにかくその水柱に乗って空までいくわけなんだよ。だから改修の時に丈夫にしてくれと念を押したんだけど……」

「そんなに前からか? まったく無茶なことを考えるな」

ファニーは俺のあまりに計画的な無茶にあきれていたが、まったくその通りです反省してます。

しかし、空仕様のパワーアップはクルー総出で行われたおかげでかなり順調だった。

カールもかなり器用で、今はペンキ片手に最後の塗装の真っ最中だ。

「おーい! ファニー! こんなもんでどうだ?」

「うむ、いいんじゃないか? なかなかうまいじゃないか」

「だろ? 俺って奴はけっこう器用なやつなんだって!」

カールの奴もまんざらではないようで、鼻歌を歌いながら作業している。

そして、森の方から手を振ってレナも帰ってきているのも見えた。

「コーンサーン! サウスバードって鳥はこれですかー」

「ジョー!」

レナはビリーとサンチョの他にもう一匹さんサンチョっぽい鳥を連れてきていた。

変な鳴き声だけど。

これはサウスバードといって、常に体内磁石で南を指し続けるという習性をもったこの島特有の鳥である。

グランドラインで方向を知ることが出来る数少ない手段の一つだと聞いていたので頼んでおいたのだが、一時間もせずに捕まえてくるとは驚きだった。

「おお、よく捕まえられたな!」

「えへへ。実は私じゃなくてサンチョががんばってくれたんですよ」

心なしかいつもよりえらそうにしたサンチョがレナの頭の上でふんぞり返る。

「イッシューカン! エサデテヲウッタゾー!」

「……サンチョ、お前って思ったよりも頭良かったんだな」

「シツレイナー!」

しみじみ言ったら、フンを落とされた。

正直すまんかった。

これで、後はルフィ達が来るのを待つばかりか。

あいつ、うまい事クロコダイルを倒せたかな?

まぁ倒してくれないと困るんだけど。

なんといっても相手は七武海だ、俺との修行が役に立ってくれたらうれしい。

ちなみに、費用は結構掛かったけど、さすが海賊の町。

俺達を、ただの旅人と間違えたアホな海賊共を返り討ちにしてお宝を頂き、資金は多すぎるくらい回収出来たので少し儲けた気分である。


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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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